小規模自治体のお手本!北海道下川町の挑戦!!

今回は一般社団法人クラブヴォーバン主催『持続可能な発展を目指す自治体会議』の第1回自治体相互視察で北海道上川郡下川町へ行って参りました。

あのレジェンド葛西を生んだ下川町です!


この持続可能な発展を目指す自治体会議(通称:持続会)とは何か?詳細はコチラを!

 

ファウンダー・村上敦さんの挨拶からスタート。

まずは下川町環境未来都市推進課長の長岡哲郎さんから取り組みの概要レクチャー。

面積の88%が森林の同町は昭和28年国有林から1,200ha払い下げから50ha植林×60年伐採の町有林経営を始め、追加払下げで現在は4,600haになっています。

更に、平成15年には北海道初のFSC森林認証を受けています。

前回の群馬県上野村同様森林で生きていく覚悟をすでに決めているんですね。

貴重な森林財産を余すことなく利用すべく、森林のカスケード利用をすでに構築していました。

・林地残材⇒木質ボイラー燃料

・枝⇒門松、クリスマスツリー

・中経木・大径木⇒構造材・造作材・一般製材・製紙用チップ等

・小径木⇒土木資材・炭・土壌改良剤等

・葉⇒割りばし・精油・化粧水等

 

これはカラマツ間伐材からつくった炭。備長炭のような火持ちが無いが着火が早く安価なためBBQ用の炭としてホームセンター等に販売しています。

ゼロエミッション木材加工施設へ。先の炭もここで生産されています。


間伐材・林地残材等を燻して強度を高めで土木用資材にしたり、そこから取れる木酢液からは色んな派生商品がつくれます。


融雪剤として炭が。何故炭?思ったのですが、炭の黒さが太陽集熱してそれで雪を溶かしやすくするんだと。

化学系のものでは無いため、畑やゴルフ場にまいても安全。確かに凄く理にかなっていると思いました。

製造工程も実に合理的に出来ています。

レールにまるごと材を入れて炭化させます。

出来たらこんな感じになります。

 これは土木用資材になります。

燻煙乾燥させて防腐力を高めた枕木。ホームセンター等へ販売されます。

炭は多方面にニーズがありますね。

トドマツの葉はエッセンシャルオイルを使ったアロマオイル、アロマソープ、アロマウォーター、アロマピロー等々の商品に生まれ変わります。

続いて木質チップ生産工場へ。

ここの運営は町の燃料屋やガソリンスタンドの企業体が組合をつくり、町はそこに委託をするという方式を取っています。

化石燃料を扱う会社の将来を考えて、敢えてその業種の仕事を創るという発想はとても素晴らしいと思います。

巨大木から小径木まで利用するに難しい材はバイオマス発電用チップに。ここにあるのは6,000t2年分。

何故2年分かと言えば1年間は天日乾しで乾燥させるからなんですね。

この機械にかかれば巨大木であっても・・・

ご覧の通り。

 

 

地球温暖化に対しての取り組みも素晴らしく、カーボンオフセット事業では

①北海道4町連携間伐促進型森林づくり事業・・・クレジット発行量:26,811t、間伐面積:1,441.46ha

②五味温泉等森林バイオマスエネルギー活動事業・・・クレジット発行量:715t

③役場周辺地域熱供給システムバイオマスエネルギー活用プロジェクト・・・クレジット発行量:437t

まだまだ紹介しきれない数々の取り組みがあり、その実績が認められ、国から

 

2008年「環境モデル都市」の認定。

2011年「環境未来都市」の認定。

2013年「バイオマス産業都市」の認定とタイトル総ナメのような輝かしい評価を受けています。

 

 次に宿泊先の五味温泉加温用木質チップボイラー施設。

チップ貯蔵庫。

そして、隣にある環境共生型モデル住宅“美桑”へ。こちらは環境省21世紀環境共生型住宅モデル整備による建設促進事業から生まれた施設です。

ここの設計者であるアトリエMOMOの櫻井百子さんに解説いただきました。

木製三層サッシや間伐材利用の分厚い断熱材を採用した超高気密高断熱仕様で省エネ性を高めて地中熱利用とペレットボイラーで給湯暖房をはかります。

そして、珍しい2種換気装置がついていて、業界人であるわたしとしては初めて見ました。

家具類はFSC認証材がほとんど!

詳細な情報はコチラを。

最後は下川町職員さん向けに今回の同行者である立命館大学経営学部教授ラウパッハ・スミヤヨークさんによる“再生可能エネルギーの経済効果”のミニレクチャー。

そして、懇親会では谷町長はじめ、武田副町長や関係部署からたくさんの職員さんが参加していただき、色んなお話をさせていただきました。

何が一番驚いたかと言えば皆さん、下川町の事が大好きでこの町の為になることを常に考え、それぞれ独立した主体性を持っていることでした。

他の市町村行政マンではまず見られない姿勢には感動すら覚えたくらいです!

わたしはエコハウス美桑に宿泊させていただき、温かい快適な夜を満喫しました。

翌朝この天空のお風呂も体験!!

翌日は“一の橋バイオビレッジ”へ。かつて人口2,000人が現在140人へと。人口減少と高齢化社会に対応すべく2012年に町営住宅老朽化から建て替えをきっかけにこのバイオビレッジが誕生しました。

 

郵便局や住民センターや食堂が徒歩圏内にあり、木質バイオマスボイラーで地域熱供給をし、高性能住宅スペックにより省エネ性も高めた環境は高齢者には非常に住みやすい街となりました。

 

各家それぞれが給湯機でお湯をつくっているとそれぞれに最大限能力の給湯機が必要になってきますが、集中してお湯をつくりためておけば、それぞれが必要な時に必要な量を取り出すことが可能になり色んな無駄が省けます。

集住化のメリットはまだまだあります。例えば電気契約。個人が個別に契約するのではなく、このエリア一括契約すると基本料金が安くなるんですね。

また、給湯暖房の使用量もここで一括管理しています。

独居老人の見守り機能もはたせることでしょう。

昭和36年の一の橋。2,000人が住む街にはJRの駅がありました。しかし平成元年にJR駅は廃線。

下川町のごみ分別は15種類!廃食油も回収してVDFをつくっているんですよ。

これは住居別にそれぞれ出すようになっています。分別が出来ていないと収集車は持っていきません。

誰のゴミか一目でわかってしまうので迂闊なことは出来ませんよね^^

地域熱供給の貯湯槽は7,000L×2基と300Lの熱交換槽。

バイオマスボイラーで400~700℃の燃焼させ、75℃のお湯をつくります。

木製ペアサッシで断熱気密性能も高い。そもそもランニングコストが実に安く平均2,000円/月!!

更に隣の施設はキノコ栽培ハウス。もちろん、同じ熱供給ラインです。

22℃の環境を一年間保つために暖房を利用しています。

15人の雇用が生まれていて、更にハウスが増えていきます。町営の施設ですが売り上げ目標は1億円!達成するでしょう。


上野村では灰菌床は燃料となっていましたがここでは肥料となっています。

何が何でもエネルギーではなく、その事情に合った利用方法がベストなんですよね。

植林用のカラマツ、トドマツもここで。

更にさらに王子製紙を誘致して同社が研究開発する漢方の施設ももちろん同じエリアで熱供給。

町が建てて王子が借りる契約です。

これはわたしもはじめてみました。専門用語で“トラス”といいます。構造計算に入れられる重要な梁で、ここでも下川の木材がふんだんに使われているんですね。

見学会オーラスは持続会会員自治体と下川町職員さんとの意見交換会。

メインテーマにしたのが市営町営住宅のあり方など。

少子高齢化、高騰する社会福祉費、人口減少、空き家問題等々全国津々浦々共通の悩みがあります。

そして、とくに持続会対象自治体である小規模自治体の悩みは切実です。

それの一つの解がここ一ノ橋バイオビレッジにあるのだと思います。

地域熱供給までいかないまでも市営町営住宅を高性能化させるだけで、ますは省エネになり、温度差の少ない環境でヒートショック解消や健康性が増します。そうなると医療費が削減され、元気な高齢者が社会に対して様々な行動を起こすことが可能になり、消費が増え経済が活性化されます。活性化されれば地域に人が集まり、他の地域からも厚まっえくる⇒更に活性化⇒人⇒活性化・・・。


“卵が先はニワトリが先か”と毎度議論になる話ですが、今の時代は間違いなくニワトリが先なのです。

ここで言えば、まずは高性能な市営町営住宅を建ててニワトリをつくる。そこから活性化と言う卵を産んでしまえば善循環の倍々ゲームが始まるんだと。

 

とにもかくにも日本の小規模自治体のお手本のような町がありますので、是非同じ悩みに苦しむ自治体はこの持続会にはいっていただき、それぞれ勉強して持続可能な発展をしていただきたいですよね。

下川町の皆様本当に有難うございました!

(文/写真/吉田登志幸)

 

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