2015/8/28~29山と生きる覚悟を決めた群馬県上野村の里山資本主義

今回はエネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ径)さんが企画した、群馬県多野郡上野村の再生可能エネルギー施設関連を視察して参りました。


人口1,315人、高齢化率43.19%、村の95%が森林という、まさに限界集落の典型のような村がこの森林を活かした再生可能エネルギー利用や地域産業の振興、雇用の創出、観光振興、移住者呼び込み、などなど限界集落とならないために、どんな施策や工夫や努力をしているかを見て参りました。

売電の為のバイオマスはつくりませんでした。

今回の水先案内人である一般社団法人上野村産業情報センターの三枝孝裕さんがそう言いました。

故に、導入したバイオマス発電プラントは上野村の年間収穫森林量約5,000㎥を想定したサイズにしました。

この選択は素晴らしいですよね。

今、というか、これから大きな問題になる全国の木質バイオマスプラントは規模が大きく、まさに林立状態。そして、認可が下りて未建設のプラントがまだまだあります。収穫量を超えた規模のプラントでは地域では足らず、当然のごとく遠方から調達しなくては発電燃料が足りません。足りない分は海外からヤシ殻燃料を輸入してくる・・・。

ある県では隣町に3カ所も大規模プラントがあり、それこそ、地域資源の熾烈な奪い合いとなるのは火を見るより明らか。

そんな分かり切った過ちをおかなさいためにも、上野村では収穫量に見合った規模を導入したのです。

先走ってしまいましたが、まず一行はペレット製造施設に向かいました。

 

このプラントは1日7tMAXで16,000t/年の規模。


と、ここでこのサイトのヘビーファン(いないか{´┴`})の方なら以前新潟のレポートで年間5tクラスのプラントをつくっても需要が無いためほとんどフル稼働出来ていないというのがありましたので、ここも同じか!?と思ってはいけません。

しっかり需要をつくります。相手は全村民。

ということで、以下のような対策をとっています。

1)対象村民が新設する場合に 2)金額上限なし。本体+設置工事の八割を村の補助で残り2割を6年の分割払い。ただし、役場が指定する機種に限る 3)6年間は役場の所有で、その後は無償貸与 4)ペレットは一般用は10kg420円

5)6年間は修理代村負担


ということで、要は暖房機はペレットストーブが断然お得にしてしまって、入口と出口をしっかり構築しているところが素晴らしいんですね。

施設見学後にエネ径理事の竹林さんにペレットやプラントについてのレクチャーをいただきましたが、丁度良いので少しペレットについて少し。

今、日本でもペレットが盛んにつくられてきていますが、先進地ヨーロッパではペレットの統一規格制度が進められているそうです。

ENplus A1規格がその最高位にあり、直径6~8mm、長さ3.15mm~40mm、灰分0.7%以下、その他、かさ密度、定位発熱量、水分率等々かなり細かくデータを取り、それに合格しないとA1規格を取得できない。

灰分に関しては日本(JIS法)も測定はしますが、

前提条件となる測定温度がEN法では550℃、JIS法815℃とかなり異なります。

温度が低い方が当然不利になるのですが、ヨーロッパではその条件を求められるのです。

 

 

日本で唯一のプラント!

次に日本で1台しかないと言われるガス化熱電併給プラントへ。

ガス化というのは通常、ペレット燃料で蒸気化させてタービンを回し発電する方式が良く知られていますが、蒸気では無くガスを発生させてタービンを回す方式の違いです。

ドイツBURKHARDT社製を採用した理由にはこのガス化式では世界NO1の圧倒的実力を誇るからと。蒸気式は大規模プラントには有効(5000kw発電クラスで60,000㎥必要)だが、上野村のように集客キャパが5,000㎥ともなると、大規模よりも小規模が適するガス化が最良の選択だったわけです。


発電能力180kw、発電効率30%、同時に熱利用で出来る温水90℃で270kw(ガスユニット70kw+発電ユニット200kw)総合エネルギー利用効率75%前後。素晴らしい数字です。

発電能力30%と言う数字だけでも驚異的で通常は10%前後しか無いとのことです。

B社が断トツに売れるわけですね。

説明がわかりにくいと思いますので図でご確認ください^^;

ここで発生する熱を隣の敷地にあるキノコセンターへ利用していて、それでもまだ余っているので、この近くにハウスをつくりイチゴ栽培も計画しています。

キノコは室温を20℃一定に保たねばならず、キノコの発酵熱の影響で冬でも20℃を超えてしまうことがあるため、1年に10か月くらいが冷房をする必要があり、その熱利用として画像の吸収式冷凍機が使われるのです。

(熱を利用して何故冷房になるのかが文系のわたしには正直今でも分かっていません・・・)

菌床仕込棟から培養棟、発生ハウス、出荷棟と合計38棟からなる巨大キノコ施設です。

ここ60名の雇用を地元から創出!

商品競争力も高く、東京や埼玉中心に大人気のブランドとなっています。

わたしもいただきましたが、驚くような肉厚と味!これは人気出ないわけがありませんね。

 そうそう、雇用の創出効果で言いますと、人口1,315人の中になんとIターンが20%もいるんです。

地方暮らしはしたいが、仕事が無い、と言った悩みは全国にゴマンとありますが、こういう先進的で競争力のある産業を村自らつくり出し、それに呼応するかのように、他地域から移住を促進する。

素晴らしいお手本がすでにここにあるわけです。詳しくはコチラを!

水先案内人の三枝さんもIターン!しかも、我らが佐野市から移住しました。

佐野市さん!優秀な人材が流出してますよ〜^^

更に、地元民と移住民の区別の方法に“呼び方”があります。

地元民は親戚が多く、そのため同姓が当然多くなり、名前で呼ばないと混乱します。一方、移住民はその逆なので苗字で呼ばれるそうな。


キノコセンターの全景。

 これはキノコの菌を育てた後のオガブロック。つまり、灰菌床。

これも捨てればただの産廃ですが、ここでの乾燥室の燃料として有効利用されます。


このボイラー用の燃料に。

次に来たのは村の福祉施設と村営住宅が一緒になった場所へ。

ここの屋根には太陽光パネルが搭載され、写真にある蓄電池50kwやペレットボイラーもあり、災害時の避難所としての機能を備えています。

ペレットボイラー250kw。

解説をする三枝さん。なんと佐野市出身!
解説をする三枝さん。なんと佐野市出身!

誰が限界集落だって!?と言わんばかりの地域の特性と色んな可能性を融合させた素晴らしい取り組みを見させていただきました。

これは座学では無く、実際にすでに行われている数々の具体的事例です。

多くの方が視察に来てはいるが、こうやって具体的に形にしている自治体が一体どれくらいあるのやら・・・。

無い物ねだりでなく、有る物探し。

素晴らしい視察となりました。

企画していただいたエネ径の皆様、水先案内人の三枝さん、そして上野村の皆さん、有難うございました!

 

文・写真・ソーラーシティ・ジャパン吉田登志幸

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